例えば風に吹かれている絵を描く。 現実ベースに観て表現するとアニメのよくある風表現は台風や強風じゃないとそう見えない。 そよ風くらいじゃ長髪は持ち上がらず地味になる。 だから現実の1.5倍はオーバーに描かないと感じが出ない。 感じの出し方の入り口として過去の上手い髪なびきを見る。
次に上手いなびきと下手ななびきを比較する。 髪の毛の束がギザギザして単調なフォルムしかない組み合わせだと質感が弱く、いわゆる漫画アニメの記号にハマった状態となる。 次に上手いなびき(魔女宅とか)を見ると髪の束の太さが自在に変化し、実物感がよく出ている。
そこまでやってはじめ実物観察、実体験の混入が出来る。 実体験の表現化には少なくともそのくらいのステップが必要。 囲碁将棋などの定石を超えた新手みたいなもの。 定石を踏まえていない実体験とやらは出来損ないにしか見えない。
髪の毛のフォルムで言えば… 単調、平行、左右対称を避けるなどのディズニー以後の記号化の歴史がある。 それらを一切知らずにしかし過去のアニメ漫画のなんとなくのイメージは目に入ってる状態で実体験を元に描くと必ず、上記の特徴が出て、硬くて平面的な髪の毛にハマってしまう。
更にリアルな実体験をベースに髪のなびきを描いたの時の問題点。 髪の毛全部をずっと動かすとカツラがズレて見える。 頭上部はなるべく動かさせず前髪は短いのつで細かいビート。更に後ろ髪が長ければゆったりとしたスピードなど髪の毛の場所によりテンポを変えないとそれらしく見えない。
実体験では動いてたから…の理由でそれを紙の上で表現した時に違和感が生じる。
実体験はエッセンスにはなるがそれだけで絵に出来ると思うのは大間違いで。
過去の名作のトライアンドエラーを無視することはできない。
【航空自衛隊】F-2戦闘機によるJDAM レーザー誘導対地精密爆撃|Japan's F-2 LJDAM Bombing JASDF https://youtu.be/qbjrKPqMC5s @YouTubeより ↑実体験を元に爆発を描くと音速と光速のズレでかなり音が遅くに聞こえ、コレを映像でやると大分違和感ありありになる。
僕も演ってみな、自撮りしてみなとは言いますがその演り方と素材の撮り方がまず半端なく難しい。 最終的には出来た方がいいが入り口としてパターン記号セオリーを覚えないことには他人に伝える共通認識を持ち得ない。
実体験の観察ばかりを重視するとアウトプットの際の記号化の段階では「自分の描き方」に頼ることになるので結局、ワンパターンになりかねない。 つまり上手くならない。 先人の上手い描き方、他人の上手い表現を覚えない限りいくら実体験が豊かでもその体感を絵にすることができない。
実体験、あるいは自分の思考に至上の価値があると思い込むことは要するに「内向き」「内省的」になる。簡単に言えば痛い中二病。 他人の技術をいかに吸収し、出力していくか?
アニメーターならアニメを、漫画家なら漫画を… 各々のジャンルが好きではじめるんだからまず1番に参考にすることは同ジャンルの出来の良い作品になる。その影響を拭い去ることができないならむしろしっかりと何がどう好きか?自覚することが大事。
アニメ漫画イラストその他コンテンツを見るという実体験と自分自身の体験をそもそも分離することがナンセンス。 ただただ全てが素材であり、並列に見ればいい。
どんだけ実体験豊かな人でもそりゃあ絵は上手いわけじゃない。 絵というある種の言語形態を上手い表現から学び入力して、それを出力するステップを踏まないかぎり上手くは描けない。
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